町田康『パンク侍、斬られて候』

町田康の長編時代小説。
町田康の作品は、『実録・外道の条件』を読んだきり。グダグダなドライブ感の町田節にいまいち乗り切れず、しばらく敬遠していたのだけど、久しぶりに読んでみる。
しょっぱなの街道沿いらへんの描写は時代小説的な雰囲気が漂うものの、その後数ページで結局いつもの町田ビートで町田アンサンブルな展開がスタート。「腹ふり党」などという新興宗教団体が登場してきては、まともで済むわけがないとは思ってたけど…。
何はともあれダメ人間のオンパレード。「腹ふり党」の脅威を説き、自分こそが「腹ふり党対策のエキスパート」と、それをネタに仕官を目論む牢人。そんな「腹ふり党」の話を真に受けてビビりまくる役人。政敵を陥れるために腹ふり党を利用しようする藩の重鎮。さらにスパイに、暗殺者に、超能力者、などなど。様々なタイプのダメダメマンたちが、現代的な説明口調でどこかで聞いたような会話を繰り返すんだが、それがいちいち「あーそんなヤツいるなぁ〜。」とか「こういうこと言うヤツいるいる」的な内容で、身近なところから、政治、経済、芸能、社会などのニュースでしか触れることがないようなところまで想像が巡り巡る。果ては、「あれ?それってオレのことか?」ってなこともあり、中々楽しい。
途中からは一転、次々に人が死にまくり、あらゆるものが破壊されていく、常識をかなぐり捨てたスラップスティックな展開になり、もー無茶苦茶。最後まで一気にたたみかけるような高速ビートで、突き進んでいく・・・ってオチたのか?この話。
でもこれは好きかも。

パンク侍、斬られて候 (角川文庫)

パンク侍、斬られて候 (角川文庫)